儲からないのになぜ苦労して本を書くのか

儲からないのになぜ苦労して本を書くのか
みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、儲からないのになぜ苦労して本を書くのかです。

#42 儲からないのになぜ苦労して本を書くのか | タカハシノリアキ「『働く』の価値を上げるスキルアップラジオ」/ Voicy - 音声プラットフォーム
音声放送チャンネル「タカハシノリアキ」の「#42 儲からないのになぜ苦労して本を書くのか(2022年7月19日放送)」。Voicy - 音声プラットフォーム

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

では、よろしくお願いいたします!

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本を書くということ

Voicyハッシュタグ企画 #本の話をしよう ということで、本を読むことについて話そうかなと思い、だいぶ台本もつくったのですが、しばらく悩んだ挙げ句、やっぱり書くことについてお話ししたいと思います。

自分はノンプログラマー向けのプログラミング書籍を単著で4冊、共著で1冊出していますが、本を書くのはなかなかしんどい作業です。そんなにしんどいのになぜ書くのかということをお話しできればなあと思ってます。

執筆した書籍紹介

ExcelVBAを実務で使い倒す技術

まず、それぞれの書籍について紹介していきます。デビュー作「ExcelVBAを実務で使い倒す技術
」は全体で292ページ、制作には343時間かかりました。

創業して2年くらい2017年のことです。もうキャッシュが尽きて死にそうなときに、ブログをご覧いただいていた秀和システムさんから執筆のオファーがあったんです。

もうやるしかないということでこのオファーを受けたんですが、お金ギリギリで執筆時間を捻出しなくてはいけなかったので、なかなかにハードな執筆でした。帯状疱疹になったり、お腹を壊したりして、身体がボロボロになりながら書き上げたという記憶があります。

この本については#8 VBAの地位を上げたいと思った話 でも触れているのですが、VBAはユーザーがノンプログラマー中心ということもあって、まずは動けばいいと。コードの可読性・変更容易性が低くて運用フェイズでめちゃくちゃ苦労させられたり、評価が悪くなってしまったりとか、せっかく頑張っても報われない事象が散見していたんです。

それを何とかしたいということで書かせていただいた1冊となります。こういう本は当時なかなかなかったので一定の評価はいただいたものと思います。発売して5年経っていますが、今でもちょこちょこ手に取っていただいてます。

詳解! Google Apps Script完全入門

次に着手したのが、「詳解! Google Apps Script完全入門」です。

GASの本は2012年以降出ていなくて、だいぶ仕様も変わってたので、書籍は無いに等しい状態でした。ネットの僅かな情報と、2冊くらいの古い書籍、英語の公式ドキュメントを頼りに学習するという感じでした。

英語のドキュメントはあるにしても、初心者ノンプログラマーには日本語の入門書が必要だろうということで、秀和システムさんに提案して執筆開始しました。全部で464ページ、制作時間は396時間。2017年12月に発売しました。

ただ、この本、ここからが大変だったんです。

出版からしばらくたった2020年2月にV8ランタイムのサポート開始というのがあって、構文が一気に新しくなったんです。慌ててクラウドファンディングも立ち上げて第2版を制作開始。

265時間の制作時間をかけて2020年11月に発売するも、その直後にまた開発ツールの刷新があり、画面が全面的に変更になったり、機能の一部変更があったり。

すぐに第3版のプロジェクトをスタートせざるをえないということになってしまいました。さらに109時間かけて、2021年7月に第3版を発売。今に至ります。

GAS入門書はほぼこの本一択だったこともあり、1〜3版にかけて、たくさんの方にご活用いただいています。最近ではGASの本が増えてきたのでいいことだなと思っています。

パーフェクト Excel VBA

続きまして「パーフェクト Excel VBA」を出版するのですが、これは、最も時間がかかりました。全576ページ、556時間かかっています。

VBAの書籍は多数あったものの、他の言語では中級程度で必ず登場する「クラス」が、VBAの書籍では一切触れられていないように思えたんです。

ネットではクラスについていくつかの情報があったんですが、ただ、プロパティプロシージャという謎のプロシージャがでてきて、これについても、触れられている書籍を見たことがありませんでした。

他の言語では本格解説書があって、言語の全体像、体系、考え方が学べるようになっており、それが中級以降の学習者に対しては意義あるものなんじゃないかなと思います。

その書籍を手に取って、ほかのプログラマーとも同じ絵を見て会話ができる。そんな素敵な状況にすることができる。VBAにはそういう書籍が無くて、VBAにもそういう書籍が必要なのではと強く感じたわけです。

企画を通すのに9ヶ月、執筆に1年以上、合計で2年以上かかりました。何が苦労したかというと、MicrosoftのドキュメントにはVBAの記述はあるものの、そこには書かれてないことも多く、海外の書籍を参考にしたり、自分で実験をして試したりとか、そんなことを繰り返しながら執筆にあたったというわけなんです。

検証に検証を重ねたので、大丈夫!と思いつつも、エビデンスがなく自信を持てきれないので、正直発売日は吐きそうな感じでした。

発売してみると、たくさんの書店で平積みになっていたのは、本当に嬉しかった覚えがあります。今でも思い出すと鳥肌が立ちます。

Pythonプログラミング完全入門 〜ノンプログラマーのための実務効率化テキスト

最後に執筆したのは、「Pythonプログラミング完全入門 〜ノンプログラマーのための実務効率化テキスト」です。こちらはノンプログラマーのためのPython入門なんですが、全553ページ、制作時間は461時間でした。

もう、何百時間という数字がだいぶ麻痺してきましたね。やはり書籍を書くのは大変だなあという感じです。

このころ、ノンプログラマー向けのExcelをPythonで操作みたいな書籍が大流行していて、いくつかの書籍ではコピペでOKとか、細かい文法は分からなくていいとか書いてあって、そういう本が売れていたんです。

これはやばい…VBAみたいになっちゃう…と強い危機感を覚えました。ノンプログラマーだからといって、プログラミングの適切な学び方は同じです。そんな流行に一石を投じるような気持でこの本の企画を立てました。

こうして企画を通してなんとか執筆が終わったんですが、とあるつまらない事情で当時話していた出版社から出すことはできなくなり、頓挫してしまったんです。

そのあとしばらくして、お付き合いのあった技術評論社さまから出していただくことになり、ようやく出せたのがこの書籍になります。

なぜ書くのか

このようになかなか苦労しながら書ききった4冊。そしてもう1冊は共著で出版させていただきました。こんな感じで書籍を書くというのは、1冊あたり数100時間以上かかりますし、プロジェクトとしても年単位のなかなか苦労する作業になります。

書籍を出すと、印税でさぞ儲かるのでしょ?と思われる方もいるかもしれないけど、それは一部の大ヒット作品の場合です。技術書は数千部からのスタートであることが多く、印税とか掛け算したら、だいたいどれくらいかわかっていただけると思います。

以上の4冊ともう1冊の共著も、ありがたいことに今でもちょこちょこ売れているのですが、それだけで暮らすにはまあ無理だよねという感じです。

では、なぜこんなに苦労して書いているかというと、後から追いかけてくる人たちへのギフトだと思ってるからなんです。

たとえば僕がサラリーマンをやめてから、VBAとかGASとかを学べて、今こうしてやりがいのある仕事ができているのは、先人たちが知識を残してくれていたからなんですね。

ただ、足りないパーツもあってそこは苦労したので、じゃあ僕が空いてるパーツを埋めて、後から来る人に伝えますよ、と。そういうバトン渡しなんです。

知識って、特にプログラミングの世界って、そういうペイフォワードが人々の成長を加速させていて、たくさんの幸せを運んでると思うんです。すごくかっこいい。

そういう魂を、ノンプログラマーの世界にも持ち込みたいと、そう気持ちでやっているところがあります。

誰でも執筆にトライ

このような取り組みなんですが、さすがに何100時間とかかけるのは大変です。

もっとライトにリスク少なめで体験できる取り組みとして、僕が運営している学習コミュニティ、ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会(通称ノンプロ研)では、技術ライティング講座の開催と、技術同人誌の制作支援プロジェクトをしています。

技術ライティング講座では、いかに学んだことを習慣化してラクに文章を書くかということをお伝えしつつ、最終的には技術書の企画を制作しています。

企画が完成したら、それをベースに50〜100ページくらいの技術同人誌を、日本最大の技術同人誌マーケット「技術書典」を目指して、執筆いただく。このようなプロジェクトになっています。

これまで技術書店には3回参加させていただいて、皆さんが執筆した8冊の技術書が出版されています。みなさん世の中のミッシングピースを技術書という形でしっかり埋めてくださっています。

ぜひノンプロ研のみなさんの書籍を手にとってみていただければと思います。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「儲からないのになぜ苦労して本を書くのか」をお届けしました。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

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では、また。

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