
みなさん、こんにちは! タカハシ(@ntakahashi0505)です。
組織やチームで取り組むとき、何が成功につながるのでしょうか?
今回は、「たった1人」の重要性に焦点を当てた書籍『すべては1人から始まる』をご紹介します。
ということで、今回は「『すべては1人から始まる』~その取り組みの「ソース」は誰ですか?」です。
では、行ってみましょう!
組織の創造性をどう引き出すか?新しい視点「ソース原理」とは
さて、今日ご紹介する本は、英治出版から2022年11月に出版され、2023年のHRアワードも受賞した話題の一冊、『すべては1人から始まる――ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』です。
トップダウン?ボトムアップ?組織運営のよくある悩み
この本がテーマにしているのは、「いかにして組織・チーム・コミュニティ、つまり人の集まりで創造的な活動を生み出すか」ということ。
組織で何かを動かそうとするとき、よくあるのがトップダウンかボトムアップか、という議論がありますよね。
トップダウンだと、指示された側は「やらされ感」が出てしまって、個々の力がなかなか引き出されない。僕も経験がありますが、上から言われたことをこなすだけだと、どうしてもモチベーションもパフォーマンスも上がりづらいものです。
一方で、ボトムアップでみんなの意見を聞こうとすると、今度は意見がまとまらずに物事がなかなか進まない…。もしくは、せっかく意見を上げたとしてもあえなく却下されて意気消沈…なんてこともあります。
最近では、「ティール組織がいいのでは?」とか「ホラクラシーはどうだろう?」といった、組織の「仕組み」に焦点を当てるアプローチも注目されています。これらも素晴らしい考え方なんですが、今回ご紹介する本は、ちょっと違う角度から切り込んでいるんです。
本書が提唱する「ソース」という存在
この本が焦点を当てているのは、「ソース」と呼ばれる「たった1人」の重要性なんです。
「ソース」とは何か?
本書によれば、「アイデアを実現するためにリスクを負って最初の一歩を踏み出した個人」と定義されています。
この「ソース」という考え方、そして「ソース」を中心に「人がビジョンを実現しようとするプロセス」を捉える原理原則を「ソース原理」と呼んでいます。
この「ソース原理」、ピーター・カーニックという方が500人以上の起業家や経営者へのインタビューや研究から見出したものなんだそうです。
そして、本書の著者であるトム・ニクソンさんは、そのピーター・カーニックさんのお弟子さんにあたる起業家なんですね。トム・ニクソンさんは、このソース原理に則ってイニシアチブ(具体的な取り組み)を可視化する「Maptio」というツールも開発し、展開されているそうです。
僕自身、この「ソース」の定義を読んだとき、「ああ、これは僕のことかもしれない」と直感的に思いました。皆さんは、何かの「ソース」ですか?
書籍『すべては1人から始まる』の構成
この本、先ほどもお伝えしたように400ページとボリュームたっぷりなんですが、大きく3つのパート、全20章で構成されています。
Part1: ソース原理とは何か?
最初のパートは「ソース原理とは何か?」、ソース原理の理論編です。
「ソース」は、誰かに任命されるものではなく、自然に生まれるものだと書かれています。「傷つくかもしれないリスクを負いながら最初の一歩を踏み出し、アイデアの実現へ身を投じたとき」、その人が「ソース」になる。
そして、その「ソース」がアイデアを実現しようとするプロセス全体を「イニシアチブ」と呼びます。さらに、そのイニシアチブを実現するための「場」が「クリエイティブ・フィールド」。このフィールドに、「ソース」がエネルギーを注ぎ込む役割を果たす、というわけです。
また、「ソース」のビジョン実現を助ける「サブソース」といった人たちもいます。
このように、ここではソース原理を理解するための重要な概念が丁寧に解説されています。
Part2: ソース原理を日々の実践に活かす~実践編~
続くパート2は、ソース原理の実践編です。理論を学んだら、次はどう活かすか、ですよね。
ここでは、より具体的に、「ソース」はどうやって特定されるのか、そして「ソース」自身はどう振る舞うべきなのか、といったことが書かれています。「サブソース」の役割についても、さらに深掘りされています。
組織における意思決定のあり方や、なんと「ソース」の継承はどうするのか、といった踏み込んだテーマも扱っています。
実は本書は、ビジネスでの組織運営を念頭に置いた内容で、新しい人をどう採用するか、財務をどう捉えるか、さらには合併や吸収が起きたときにどう対応するか、といった具体的な場面でのソース原理の活かし方も示されています。
経営者の方やチームリーダーの方は、特に興味深い部分じゃないでしょうか。
Part3: 本来の自分を取り戻すマネーワーク
そして最後のパート3は、「本来の自分を取り戻すマネーワーク」と題されています。これはソース原理とは別の、ピーター・カーニックさんが考案したワークなんだそうです。
なぜお金のワークが?と思うかもしれませんが、本書では「ソースがお金とどのような関係を結ぶかが、クリエイティブ・フィールドに大きく影響する」と述べられています。
確かにお金の問題は、何かを始めようとするとき、そして継続していく上で避けては通れないテーマですよね。
このマネーワークを通じて、お金との関係を問い直すことが、結果として「ソース」自身の自己成長にもつながる、というアプローチです。
僕がこの本を読んで印象に残ったこと
さて、ここまで書籍の概要と構成をお話ししてきましたが、僕自身がこの本を読んで特に「なるほど!」と感じた点について、もう少しお話しさせてください。
「無視されてきたパーツ」を言語化した衝撃
まず感じたのは、この「ソース原理」という考え方が、これまで多くの組織や取り組みの中で、どこか曖昧にされたり、あるいは無視されてきたりした「大切な何か」を、見事に言語化してくれている、ということです。
例えば、一般的なビジネス組織を思い浮かべてみてください。
社長がいて、部長がいて、課長がいて…といったヒエラルキー構造がありますよね。
トップには権限があって、物事を決定することもできる。でも、なぜか組織がうまく回らない、活気がない、なんてこと、ありませんか?
本書の言葉を借りれば、それは「ソースが不在」だからかもしれません。
つまり、その組織やプロジェクトに、真の創造的なエネルギーを注入する人がいない状態。そうなると、組織はただお金を稼ぐためだけの集まりになってしまって、新しいアイデアやワクワクするような創造性が発揮されにくくなる。
結果として、なんだか「面白くない」職場になってしまう…というのは、ありがちな話かもしれません。
「ソースが現場なのに機能していない」という課題
もう一つ、ハッとしたのは「ソースが現場にいるはずなのに、機能していない」というケースです。
本書では、組織の公式なヒエラルキーとは別に、それぞれのイニシアチブ(取り組み)ごとに「クリエイティブヒエラルキー」というものが存在し、そのトップに「ソース」がいる、と説明されています。
例えば、会社の中の一つのプロジェクトを考えてみましょう。
そのプロジェクトの「ソース」は、必ずしも役職が一番上の人とは限らないわけです。もしかしたら、平社員の誰かが熱い想いを持って「これをやりたいんです!」と声をあげたのが始まりかもしれない。その人が、そのプロジェクトの「ソース」なんですね。
でも、組織の構造や文化によっては、その「ソース」であるはずの人が、権力に押さえつけられていて十分に力を発揮できないことがある。
上司の顔色を伺ったり、形式的な手続きに追われたりして、本来持っていたはずの情熱やアイデアが活かされない。これは非常にもったいないことですよね。
ノンプロ研と学びのコミュニティの立ち上げ、運営
僕自身が主宰している「ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会(ノンプロ研)」のことを考えると、この「ソース」という概念は非常にしっくりきました。
ノンプロ研の「ソース」は、紛れもなく僕自身だと確信しています。その根底には、「日本の働くの価値を上げる」という、僕自身の強いビジョンがあります。
そして、この「ソース原理」は、ノンプロ研のような学びのコミュニティづくり、運営にも、非常に多くのヒントを与えてくれると感じています。
実は今、ノンプロ研では「コミュニティ3.0問題」と僕が呼んでいる課題に直面しています。これは、コミュニティが成長し、多様な人が集まる中で、当初の熱量や方向性をどう維持し、さらに発展させていくか、という問いです。
この課題と向き合う上で、ソース原理はヒントになると感じています。
また、現在開発を進めている「学びのコミュニティづくり講座」においても重要なパーツとなりそうです。僕自身、コミュニティ運営には「ソース」が必要であると強く感じているからです。
まとめ
『すべては1人から始まる』は、組織論やリーダーシップ論に新しい視点を与えてくれるだけでなく、コミュニティ運営や個人の活動においても、大切な気づきを与えてくれる一冊だと思います。
もし皆さんが、何か新しいことを始めようとしている、あるいは組織やチームの創造性を高めたいと考えているなら、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
きっと、たくさんのヒントが見つかるはずです。
以上、「『すべては1人から始まる』~その取り組みの「ソース」は誰ですか?」についてお伝えしました。
引き続き、みなさんがいきいきと学び・働くためのヒントをお届けしていきます。次回をお楽しみに!
この話を耳から聴きたい方はこちらからどうぞ!