みなさん、こんにちは!
タカハシ(@ntakahashi0505)です。
こんな話があります。
マークが朝起きると、アインシュタインからスマートフォンに通知が来ている。「このままでは予算目標を達成できない」。焦るマークだが、アインシュタインは同時に行動の指針も知らせていた。
「予算を達成するには、このリード(見込み客)にアプローチするといい」「残念ながら今進行しているあの案件は見込み薄」――マークはAIの分析に従って、その日の行動を組み立てていく。過去に成約した案件と比較して「メールの返信が遅い」「上層部とのつながりが薄い」「この人に連絡を取ってみると進展するかもしれない」とアドバイスを出す。マークはAIからの提案に従って、新たなキーパーソンに連絡を取り始めた。アポイントメントのスケジュール調整にお任せだ。
1日の終わりに提出する日報も、1から書く必要はない。カレンダーに登録した行動やメールなどから、AIがレポートの下書きを作ってくれる。
…これはクラウド型営業支援・顧客管理サービスSalesforceに2016年9月に正式リリースされたAI機能「Einstein(アインシュタイン)」を利用したことを想定した「営業担当者マーク」の仕事ぶりとして紹介されたものです。
人工知能・AIいうと毎日のように何らかのニュースが報じられ、目にしない日はないほど注目されています。
そして、Salesforceをはじめ、MicrosoftやGoogleといったIT大手各社がこぞって研究を重ねており、エンタープライズの分野でもすでに続々と応用がされるようになってきていますから、非常にワクワクする日々でございます。
一方で、AIが仕事を奪うなどといったニュースも多く見られますね。
経済産業省も
人工知能(AI)やロボットなど技術革新をうまく取り込まなければ、2030年度には日本で働く人が15年度より735万人減る
と発表しています。
AIは見方によっては、大きなチャンスにも、大きなピンチにも見えますね。
さて、話は変わりまして、先日株式会社マネーフォワードを中心に設立された「一般社団法人Business IT推進協会(BIPA)」の決起会「BusinessIT推進サミット~テクノロジーがもたらす産業構造変革とは~」に参加してきました。
「一般社団法人Business IT推進協会」は中小企業へのITサービス普及を目指す協会で、日本マイクロソフト株式会社、株式会社クラウド―クス、ChatWork株式会社など多くのエンタープライズクラウド・ITサービスを提供する企業がパートナーとして参画しています。
その決起会の中で、人工知能・ディープラーニング研究の第一人者でいらっしゃる東京大学特任准教授、松尾豊先生のお話「人工知能がもたらす未来」が非常に興味深い内容でしたので、記録しておきたいと思います。
アルファ碁の強さの裏にある技術とは
このところ、将棋の公式戦でスマホでカンニングしていたのではないか?という問題がニュースになっていますよね。
勝負中に中座をしている最中にスマホで次の一手を調べるという不正が行われているのでは?という疑惑ですね。
これですが、2010年あたりまでは起こり得なかったニュースなんです。
なぜなら、人間のプロ棋士のほうがコンピュータよりも強かったからです。
2016年の今となっては「コンピュータのほうが強くなってしまった」からコンピュータで調べる意味があると。
さて、一方で囲碁の話です。
GoogleのAI「アルファ碁」が人間のプロ棋士に勝ったというニュースは記憶に新しいところです。今年2016年の3月のことでした。
松尾先生曰く、AIでいう囲碁は将棋より10年遅れでトッププロに勝てるようになると言われてきていたのが、その予想よりもはるかに早い段階で勝てるようになってきてしまったが衝撃的だったとのこと。
そしてその要因は「ディープラーニング」で破壊的なイノベーションが起きていることによるそうです。
ディープラーニングとは
ディープラーニングは機械学習の手法の一つで、別名「深層学習」とも呼ばれます。
機械学習ですから、コンピュータに何らかの情報を与え続けることで、コンピュータが学習をしていきます。
これまでの機械学習とディープラーニングの何が違うかというと、その学習の過程でその特徴を人間が与えるのではなくコンピュータ自身が「見抜く」ことにあります。
例えば、動物の画像の例があったとして、人間が特徴を定義して
- 目が円い→猫
- 耳が立ってる→犬
…
などというルールをコンピュータに与えます。すると、コンピュータは目が丸い犬を猫と判定してしまったり、耳が立っている猫を犬と判定してしまったり、例外のたびにエラーとなってしまいます。
ディープラーニングでは、猫の画像をたくさん見せまくることで、「猫らしさ」の特徴をコンピュータ自身が自動的に取り出します。それをもとに判定をするということになります。
2012年に「Googleの猫」と呼ばれる研究がありました。
当時、画像認識ではコンピュータによるエラー率が26%程度で、1年間研究すると1%程度下がるという状況だったのが、Googleによるディープラーニングのチームは、一気に16%台をたたき出してしまったとのこと。
ちなみに、昨年2015年にMicrosoftのチームも、Googleのチームもエラー率3~4%を達成しているそうです。
人間ですらエラー率は5.1%なので、画像認識ではコンピュータが人間を既に超えているということになります。
農場、工場、建設現場から人が消える?
画像認識についてはコンピュータが人間を超えてしまいました。
次に松尾先生からお話があったのは「運動の習熟」です。ロボットや自動運転などへの応用ということになります。
まず簡単な例として、ブロック崩しがありますが、これも少し前に話題になりましたね。
ATARI社のブロック崩しゲームをコンピュータにプレイさせます。コンピュータに入力させるのは、ゲーム画面の画像とスコアだけです。
最初はへたくそなコンピュータも、徐々に訓練を重ねていくことで、どの状況でどの方向に打ち返せば点数が入るかを学んでいきます。
最終的には
ブロックに開いた穴からボールを壁の後ろに送り、背面からブロックを崩すという手法を自ら編み出した
わけです。
これをロボットに応用します。
これまでロボットは一般的に同じ形状のものに対して同じ操作するものでしたが、十分に訓練を積んだロボットであれば、様々な形状の物体を状況に応じた操作をさせることができるようになります。
トマトの収穫もロボットができるようになります。
工場や建設現場からいよいよ人がいなくなりそうじゃないですか?
松尾先生曰く、製造に関して得意としてきた日本が、このディープラーニング+ロボットの領域を獲れるかというのが非常に重要とおっしゃっていました。
確かに!
翻訳が必要なくなる世界
さて、次の話題は「言語の意味理解」です。
真の意味でコンピュータが言語を理解する、というのをどう定義するかという話なのですが
を言語を理解した、ということにしようということです。
それでいうと前述の「画像認識」の延長線上にある話で、「猫」という単語が「風船が山を飛んでいる」という文に置き換わったものと捉えることができます。
またその逆、実際に
- A very large commercial plane flying in blue skies.
- A stop sign flying in blue skies.
などの文を入力して、コンピュータが画像を描くことも実現されています。
そうなると例えば
- 英語を画像に変換
- その画像を日本語に変換
をすれば、その作業はイコール翻訳ということになります。
もう、英語勉強しなくていいじゃん!
なんて喜ばしいことのように思える一方で、非常に考えさせられるコメントがありました。
それは、ビジネスとして「日本語」という参入障壁に守られている分野がグローバルと戦わなければならなくなるということです。
人工知能はそれ自身が仕事を奪うだけでなく、グローバルでの仕事の奪い合いも加速させるトリガーになるのかも知れません。
まとめ
AIだ人工知能だと私もワーワー言っていましたが、そのわりにはちゃんと理解できていなかったなと反省しております。
今起きている人工知能によるイノベーションの核にはディープラーニングがあるということ、またそれによって大きなチャンスもあり脅威もあるということですね。
ビジネスの生産性そしてそのためのIT活用という意味では、日本は諸外国に比べて出遅れてしまっています。
今の人工知能ブームと働き方改革ブームにうまく乗って、一気に追いつけ追い越せと行きたいところですね。
私も微力ながら貢献できればと思います。