みなさん、こんにちは!
タカハシ(@ntakahashi0505)です。
今、第4次産業革命がまさに本格化してきたと言われています。
AI、IoTなどニュースはとてもよく目にするけれども、あまり自分には関係ないかな、と感じていらっしゃる方が多いのではないかと思います。
しかし、ご存知の通り、長いこと停滞モードに入ってしまっているこの日本が巻き返すチャンスが来ています。
それは、この第4次産業革命と、合わせて話題になりつつある働き方改革によるものです。
今回の記事では、第4次産業革命とは何か、また戦後日本の高度成長の仕組みについてひも解きつつ、どのように第4次産業革命と働き方改革のチャンスをつかめば良いかを考察しています。
とても長い記事ですが、ぜひ皆さまの「働く」を立ち止まって考える機会にして頂ければと思います。
第4次産業革命が本格化
人工知能、IoT、ビッグデータをはじめとするテクノロジーを用いて、産業構造が大きく変わると予想されています。
今、それが第4次産業革命と呼ばれ、大いに注目を集めています。
ドイツ政府が産官学の結集でモノづくりの高度化を目指すとして2012年から打ち出している「Industry 4.0」を日本語にしたもの。
とある通り、この革命の流れは2012年から始まっていて、今年が5年目を迎えるということになります。
対象となる具体的なテクノロジーとしては限定的なものではなく、AI、ロボット、IoT、VR、ビッグデータ、など革新的な技術全体が起こす産業の革新・構造変化を指していることが多いようです。
企業活動の領域における直近の動き
第4次産業革命については、既に企業活動の領域でも
- AIを活用したチャットbotによるカスタマーサポート
- MFクラウドやfreeeなどのクラウド会計ソフトの仕訳ルール自動学習機能
- Googleドライブ内の自然言語による検索機能・アップロードした画像の認識処理
- Salesforceに搭載されたAI「Einstein」による営業行動支援
- 自動運転による配送実験
など、様々な分野で実現がなされつつあり、完全に構想段階から実装・運用段階に移ったという印象を受けます。
参考:自動運転トラック、高速走った 米で缶ビールを配送
参考:AIは営業の仕事をどう変えるのか?
第4次産業革命による経済効果
経済産業省では、これら第4次産業革命による経済効果として
人工知能やIoTによるトータルの経済価値は、日本経済の4倍もの規模になるとの試算があります。日本のGDPは 4.1兆ドルですが、例えばものづくり分野で3.9兆ドルの変化が起きるのです。
と伝えています。
この恩恵をいかにして受けるか、企業間、場合によっては国家間の熾烈な競争が繰り広げられているところと言えます。
これに関連して、会計ソフトの自動仕訳に関しては、freeeがMFクラウドを特許侵害で提訴したというニュースもありました。
参考:freeeがマネーフォワードを提訴、勘定科目の自動仕訳特許侵害で
両社とも応援する私としては残念なニュースですが、それほど本気で譲れない領域であり、今が重要なタイミングであるということを物語っている一つの例とも言えます。
多くの日本企業は第3次産業革命の前?
しかし、日本の企業、特に非製造業については第4次産業革命はおろか、第3次産業革命の恩恵にすら預かれていない企業が多いという事実があります。
第3次産業革命というのは、コンピュータとネットワークなど情報を中心とした産業の革命です。
1970年代からものづくりにコンピュータが使われるようになり、さらに1995年を元年としてインターネットが急速に普及、さらにスマホやSNSなどの革新的なサービスも生まれ、私たちの生活にどっぷり浸透しています。そして、その流れがスムーズに第4次産業革命につながっています。
しかし、周りの職場を見渡してみると、ほとんどの職場でコンピュータは使っていますが、その本質的な恩恵には預かれていません。皆さんの職場では、こんな仕事がありませんか?
- 手書きの書類をデータで打ち込む
- コピー&ペーストを繰り返してデータを整理・分析する
- ファイルを一つ一つ開いて探す
- 作った資料を印刷して回覧する
- 会社に戻ってファイルを確認する
- Webサイト検索や電話帳から手作業でアタックリストを作る
- 大量に電話をかけてアポイントをとる
ちょっとマクロを組んだり、今や格安のクラウドサービスやWebサイトを使えば、いずれも自動化と効率化できるものですが、あえて人力でやり続けてしまっています。
日米の経営者のITに対する意識の差
その様子が如実に表れているレポートがあります。
一般社団法人電子情報技術産業協会によって、2013年6月に行われたITに対する意識調査では
調査結果によれば、日本の経営者は、IT投資をさほど重要とは考えていない。米国経営者はIT投資を売り上げ増のための「攻めのIT投資」と考えているが、日本の経営者はコスト削減の「守りのIT投資」と考えているという大きな差が出た。また、日本の経営者の半数近くが、「クラウド」「ビッグデータ」という言葉を聞いたことすらないと回答している。
とされています。また、同報告によるIT投資の重要性認識の日米比較は以下図の通りでした。
日米のITに対する意識の差は歴然です。
なぜ、ここまでの意識の差が生まれてしまっているのか、その一つの理由を本記事の後半でひも解いています。
第3次産業革命の恩恵に預かってきた企業たち
その第3次産業革命ですが、その中心にい続けることができた企業が軒並み大儲けしているという事実があります。
2016年12月時点の、世界時価総額ランキング20位に入っている主なコンピュータ・IT関連の企業とその創業年を以下にリストしました。
- 1位:Apple(1976年)
- 2位:Alphabet(Google)(1998年)
- 3位:Microsoft(1975年)
- 6位:Amazon.com(1994年)
- 7位:Facebook(2004年)
- 12位:Tencent Holding(1998年)
- 20位:Alibaba Group Holding(1999年)
世界トップ10のうち5社がアメリカのIT企業です。テンセントとアリババは中国のIT企業です。
引用:世界時価総額ランキング2016 ― World Stock Market Capitalization Ranking 2016
なお、日本の時価総額最高の企業はトヨタで世界では29位、日本企業で唯一のトップ50位圏内です。ちなみに、韓国企業もサムスン電子が唯一のランクインで23位…ちょっと日本の状況と近いものとして照らし合わせてみてしまうのは私だけでしょうか?
また、日本の東証一部時価総額ランキングでいうと、ITメインの企業でいうとヤフーが42位、任天堂はITと呼んでいいかどうか微妙ですが32位。
その他は製造、通信、金融がズラリと並ぶカタチで、日本のIT企業はアメリカや中国の企業に比べると明らかに上位には食い込めていない印象です。
日本の経済成長の仕組みを紐とく
20世紀中盤以降、日本は未曾有の高度成長を果たしました 。ここでは、その日本の経済成長の仕組みを明らかにしていきたいと思います。
周知の通りですが、戦後日本では労働人口が爆発的に増加しました。それが、人口ボーナスとして成長の要因になってきたと語られていますが、しかし、日本の成長を支えてきたのは、それだけではありません。
GDP増加への寄与には
- 労働時間の増加
- 資本ストックの増加
- TFP
この3つが関わっていると考えられています。
労働時間は読んで字のごとくです。労働時間は労働人口×ひとりあたりの労働時間です。
資本ストックとは
資本ストックとは
企業が生産に使用するために保有している建物や設備、あるいは、国や自治体が産業や生活の基盤として整備した社会資本の量。金額に換算して示される。
引用:資本ストック(しほんストック)とは – コトバンク
のことで、ざっくりいうと生産設備の価値を金額換算したものと言っていいかと思います。
大きな工場で優秀な設備を使えば生産量が上がりますし、道路が整備されればスムーズに運搬できますし、無線通信網が整備されれば場所を問わずに高速かつ大量のデータ通信が可能になります。
TFP(全要素生産性)とは
また、TFPとは全要素生産性のこと、つまり
経済成長の要因のうち、技術の進歩や生産の効率化など、資本や労働の量的変化では説明できない部分の寄与度を示すものとして用いられている。 TFP(total factor productivity)。
引用:全要素生産性(ぜんようそせいさんせい)とは – コトバンク
を言います。具体的には、組織や人員の能力向上、イノベーションによる生産量増加などが挙げられます。
日本のGDP成長に寄与をしもの
以上をまとめると経済を成長させるためには
1.労働時間を増やす
2.資本ストックを増やす
3.生産性を上げる
という3つが寄与しているかどうかを見ていくとよいということです。
それら3つの要素、労働人口、資本ストック、TFPが、どれだけGDPに寄与していたかというデータが、独立行政法人経済産業研究所「日本産業生産性(JIP)データベース2013」に示されています。
グラフがこちらです。
日本では1990年までは、この3つの要素全てがバランスよく経済成長に寄与していたと言えます。
優秀な教育を受けた農村の若者たちが、都市に出て大規模な工場で良質な設備を扱うようになることで、大量生産モデルがドハマりしました。労働と資本ストックとTFP、この全てが完全にかみ合ったように見受けられます。
日本の成長について、何か最も寄与していたかを見ると、人口の増加もそうですが、むしろ資本ストックとTFPによるGDP寄与のほうが大きいとされています。
1998年をピークに労働人口は減少しますので、それ以降は労働人口による寄与を受けられるわけがありませんが、一方で資本ストックの増加とTFPの寄与がキープできれば、全盛期時代とまでは言わずとも、十分な成長を果たせていた可能性は十分にあったと言えます。
低迷のしわ寄せをヒトに押し付けた
なぜそれができなかったか、その一つの要因として、業績低迷時のアクションとして多くの経営者が、投資や変革を仕切れなかった、ということが考えられます。
労働人口はもう増えませんので、打つべき手としては投資とTFPに注目すべき、つまり
- 投資を増やす
- 生産を効率化する
このどちらか、もしくは両方に注目すべきだったのですが、そこには手を入れることができませんでした。
ともあれ、業績は悪化しますからコストを削減します。特に人材に関しては
- 人員の削減
- 新卒と非正規労働者への切り替え
- 下請け叩き
このようなアクションが継続されます。
これまで終身雇用のつもりでいたのに、転職を余儀なくされた社員は、家族を守るために給与を下げてでも転職をします。新卒は大量に確保しますが、安い初任給から始まり、報酬の上昇はなかなか見込めません。非正規に至っては、報酬が低いだけでなく、調整要員となってしまいます。
資本ストック水準と消費の低迷
企業単体で見れば、これで一時的な利益と株価の回復が期待できますが、全体としては貯蓄率の減少により資本ストック水準の低迷が引き起こされます。
労働者の給与が少なくなりますから、全体として貯蓄ができなくなります。それにプラスして拍車をかけるのが高齢化で、定年退職をした高齢者がこれまでの貯蓄を切り崩して生活をし始めます。
日本の貯蓄率は90年代に入ったあたりから急速に低下し始め、2000年には10%を切った。2007年には1.7%にまで落ち込み、アメリカと並んで最低水準まで下落してしまった。これでは経済活動に投入する資本ストックの水準が低迷してしまうのは当然である。
とある通りです。
労働者へのしわ寄せによるもう一つの悪影響として、当然ながら国内消費の低迷が起こります。
高度成長期は、1億総中流家庭の消費が市場を大いに支えていましたが、少なくない中流層を低所得者層に転落させてしまい、結果として市場環境の低迷を誘引するという、悪いスパイラルに入ってしまいました。
ここから抜け出すのが大変なのは、皆さんもご存知の通りです。
日本を代表する大手IT企業も大量生産モデル
本来であれば、遅ればせながら第3次産業革命を追いかけてその分野で投資やイノベーションが起きるべくなのですが、なかなか進みませんでした。
労働者や下請けを少しずつ削ることで、 なんとかキープできてしまったのが、この20年間。
資金を切り崩すとお金が減りますが、バブルのときに優遇して抱えすぎてしまった人材を切り崩すとむしろ利益が上がる…そんな意識が働いたのかも知れません。
そう考えると、人材の最適化が終わるまでは、経営者は危機感を覚えて変革の必要性を感じることはなかったのかも知れません。
以前書いた以下の記事がそれを物語っています。
ちなみに、昨年話題になった、大手IT企業によるキュレーションサイトの問題も、関連して考えることができます。
各社は日本を代表する企業、しかもITをメインに据える企業であるにも関わらず、各社こぞってクラウドソーシングやインターンによる人力大量生産モデルに社運をかけていました。
参考:DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言
この件には強く抵抗感を感じます。
というのも、クラウドソーシングやインターンなどの新しい仕組みが、非正規社員以上に労働力を買い叩くモデルとして目をつけられたのだと考えると、どこまで労働力を搾り取れば気が済むのか…と、日本のリーダーたちの恐ろしさを感じざるを得ないのです。
政府による働き方改革推進が開始
一方で政府は、昨年から「働き方改革」を進める政策を大々的に推進し始めました。
大胆な金融政策や、財政出動を相当頑張ったとしても、今となっては古めかしい大量生産モデルに固執したままでは、経済を立て直して世界と渡り合っていくことはできない、この事実を、国として認めざるを得なくなっただと思います。
実際に昨年は以下のような動きがありました。
- 労働基準法の「36協定」の運用を見直し検討(月80時間?罰則検討?)
- 厚生労働省の「モデル就業規則」から副業・兼業禁止規定をなくし原則容認に
- 同一賃金同一労働のガイドラインの制定
参考:政府が残業規制を強化~有効な一手とするためにそれぞれができること
参考:正社員の副業後押し 政府指針、働き方改革で容認に転換
参考:同一労働同一賃金へ政府が指針案 格差固定の懸念も
今のところ、政府の施策はいずれも企業の活動の大きな転換を強制するほどのものではありませんので、多くの企業が何の影響も受けずに活動を続ける可能性も十分にあり得ます。
しかし、一部の先進的な企業は、政府の取り組みの意図や、将来的に起こり得る危機感にならって、自ら急速に変革を遂げていっていますし、ニュースでもかなり報道されるようになってきました。
これまでの風潮に変化が訪れるきっかけとしては期待できるのではないかと思います。
労働力を搾るのはやめて、人材の能力を解放すること
以上、長々とお伝えしてきましたが、日本の復興のカギを握っているのは、早期に第3次産業革命をさっさと追い越して第4次産業革命に流れ込むことです。
労働人口の増加は見込めません。今すぐ手をつけらる必要があるのは、効果的な設備投資をする、または組織や人材の能力を解放して生産性を上げていくことです。
Excelを上手に使ったり、クラウドを使ったり、Webサイトを運用したり、モバイルを活用したり、無駄な会議や電話や日報や勤怠連絡をなくしたり、現場に裁量を与えたり、通勤時間をなくしたり、書類を減らしたりデジタル化したり、今から試せることがたくさんあります。
投資先として大がかりなシステムや設備でもいいのですが、個人的にはもっとデジタル人材育成に投資をしてもよいと思います。
自動化や効率化だけでなく、デジタルに本気で取り組むことで、本業+デジタルの領域に新たなイノベーションが生まれます。第3次、第4次の領域ではヒトがかけた領域=生産ではなくて、イノベーションの結果、生み出したプロダクトがあり得ないほど働いてくれます。
こんな感じです。
1分間でGoogleが検索される回数は200万回。
1分間で27万8000回ものツイートがTwitter上に発生。
Facebookでいいね!される回数は1分間で187万5000回。
世界でもトップクラスの優秀な人材を抱えているのですから、単純労働から解放をして、本質的に価値のある仕事をいかにさせられるか、ここがポイントになってくるものと思います。
今年一年、日本の政府と企業、そして一人一人が、いかにしてこのチャンスをつかんでいくのか、見守っていきたいと思います。