みなさん、こんにちは!
気がつけばイベントレポートばかりになってますタカハシ(@ntakahashi0505)です。
さて先日のこちらの記事
に引き続きまして「WordCamp Tokyo 2015」のレポートとなります。
今回のテーマは「WordPressによるマルチパブリッシング」です。
てか、WordCampのパンフレット眺めてて、なぜWordPressのイベントにePubの話題が出てくるんだという謎…、そして私も以前は電子書籍業界にいたものですから、なんか引力のように今回紹介するセッションに引き寄せられてしまったのです。
今後のネットの世界では「マルチパブリッシング」が必要になってくるだろうと言われているのですが、その理由とその際のWordPressの使い方についてレポートをしたいと思います。
WordPressで公開したコンテンツを電子書籍化して配信
今回のレポートは、高橋文樹さんによるセッション「マルチパブリッシングプラットフォームとしてのWordPress」を中心にお伝えしたいと思います。
高橋文樹さんは、小説家でありWeb制作者という、なかなか見る機会の少ない組み合わせの肩書きをお持ちの方です。
小説家と言うと、避暑地とか外界とのコンタクトを一切遮断して執筆…みたいなドラマで培った勝手なイメージがあるわけですが、文樹さんはむしろネットで外界とつながりまくっています。
今回のレポートは、文樹さんがWordPressで制作・運営されている「破滅派」というオンライン文芸誌にまつわるお話になります。
マルチパブリッシングとは何か?
「マルチ」を付ける前に、まず「パブリッシング」の定義なのですが、皆さんどう理解されていますか?
文樹さんのセッションでは
公(Publish)にすること
と定義されていました。
ちなみに、別のレポートでご紹介しましたAutomattic社の高野さんの基調講演では「パブリッシング」の定義を
表現したいメッセージをパッケージ化して届けること
とされていました。
一般的には書籍などの出版がイメージとして最初に来るのですが、Kindleで電子書籍を配信することや、ブログを執筆して記事を公開することもパブリッシングと捉えることができます。
そういう意味で
WordPressは「パブリッシングプラットフォーム」
なんですよ、ということです。
パブリッシングを簡単にできるWeb上のツールなわけです。
で、前述の「破滅派」はWordPressで制作されているのですが、投稿された小説はWebで公開されるとともに、別の発信方法つまりパブリッシングがあります。
発信先が1つではないから、マルチパブリッシングなわけです。
その別のパブリッシングができる先が「Kindle」で、WordPressをePubジェネレータとして使うことでそれを実現する、という衝撃的な内容でした。
Kindle…黒船来航!
「破滅派」はWordPressで制作されたオンライン文芸誌サイトでで、そのサービスは
- WordPressでできている
- 誰でも会員登録でき、作品を公開できる
- 内容の制限はない(したがってAdSenseは設置していない)
- クオリティにも口出しをしない
といったものです。非常にオープンな方針ですね。
ですが、AdSenseがないですし広告モデルでは収益積は厳しい…では、マネタイズをどうするか?という問題なのですが、そこで黒船来航!というわけです。
そう、AmazonによるKindleです。
Kindleが2012年10月に日本でサービスを開始してくれたおかげで、ePubという形式でコンテンツを作ることで、KDP(Kindle Direct Publishing)という機能を通して誰でも出版ができます。
文樹さんは、「破滅派」にアップされた小説コンテンツをWeb上で公開するとともに、WordPressに特定の投稿をePub化する機能を搭載。
ある程度ボリュームが溜まったコンテンツは電子書籍化してKindleで販売しようと画策されたわけです。
これ、電子書籍業界にいる人はわかると思うのですが、かなり画期的なことなんですよ。
なぜ画期的なことなのか?
ePubってそもそも何者だ?という話なのですが
EPUBとは、アメリカの電子書籍関連の業界団体IDPF(International Digital Publishing Forum、旧Open eBook Forum)が策定した、電子書籍のファイル形式の一つ。Webページを作成するのとほとんど変わらない工程で電子書籍を作成することができる。
引用:IT用語辞典
です。
そうなんです、ePubってXHTMLやCSSを使ってZipで固めたものなのでWebページと似たような記述で作れるんですね。
だから、Webページを電子書籍化するのって、とっても相性いいじゃん!すぐできそうじゃん!!みたいな気がするのですが、実際は…
- JavaScriptは(だいたい)動かない
- 外部リソースは読み込めない(Twitter,YouTubeなど)
- 目次とか関連ファイルとかXMLで専用のファイルに記述する必要あり
- 端末やビューアアプリによって独自仕様が…
などの色々な問題があって、なかなかカンタンにはいかないのです。
それらを全て吸収した上でのWebサイトからePubを作成するジェネレータを開発するのは難儀なはずなんです。
それを、WordPress上に開発されていた。コンテンツを選択して、ボタン1つでePubができちゃうわけです。しかも小説家の方が開発された…衝撃的でした。
変化するWordPressの役割
さて、例えば当ブログはWordPressで作成してWebに公開します。
Webのみなので、マルチではないパブリッシングです。
今はGoogle検索などでそこそこ読まれていますが、実はこのままぼけーっとしていると、インターネットの時代の波の変化に完全に乗り遅れます。
というか、もう既にその変化は起きています。
キーワードは「スマホ」なのですが、どういう変化が起きているか説明していきます。
Facebook専用のコンテンツを用意しなきゃ
例えばこちらの記事。ちょっと前の発表ですが、Facebookの「Instant Articles」についてです。
つまり、Facebookで記事を読むとき、現在はFacebookアプリがWebページを読み込んでくれてそれを表示しているのですが、今後は「Facebook専用のコンテンツ」を読めるようにするよ、ということです。
そしてそのFacebook専用のコンテンツはUXが優れていて、リッチで、きっとインプレッション的に優遇をされることになります。
そうなると、今までのWebページを作っているだけでは、Facebookではあまり読まれなくなってしまう弱い立場になっていく可能性があるということです。
マルチパブリッシングをせざるを得なくなる
私が聴けなかったセッションなのですが
このツイートを見る限り、この点で非常に興味深い話をされていたに違いない…!
今やインターネットはスマホが主役になっていますが、スマホを使っている人たちはLINEとか、Facebookとか、Twitterとかのアプリの外に出ることはせずに、その中で完結するコンテンツを楽しむようになる、ということです。
ですから、我々もWebにコンテンツを公開するだけのシングルパブリッシングではなくて、その他の配信先で完結するコンテンツも用意するマルチパブリッシングをやらざるを得ないということになります。
ですが、文樹さんのセッションで証明されたことがあります。
WordPressを使っていればWeb向けの投稿をその他の配信先(例ではePub)に変換できるということを証明されたわけです。
もちろん、他のWeb制作ツールでも、またはHTMLソース自体を流し込んで他の配信先向けのコンテンツを生成するツールはたくさん出てくるかも知れませんが、WordPressはなにせGPLですから。
全世界の開発者たちが知恵を絞って、Facebook、Twitter、ePubなど様々な配信先に向けた素敵なコンテンツ変換プラグインを開発してくれるものと思いますが、期待しすぎでしょうか??
まとめ
以上、WordCamp Tokyo 2015のレポート第2弾、いかがだったでしょうか。
今回紹介したセッションは本当に話の内容も、間に挿入される小ネタも面白かったのですが、最も注目すべきポイントは
- これからはマルチパブリッシングが必須
- その上でWordPressは期待度が高い
ということだったのではないかと思います。
しかし、時代の流れを読むというのは難しいものですが、それも十分に踏まえて寄り添うツールや身に着けるスキルを選択していかなくてはいけませんね。
さて、WordCampについてはまだレポートしたいことがあるのですが…あとはテクニック系になるので、私が消化できてからのレポートになると思います。
気長にお待ち頂ければと思います。