
みなさん、こんにちは! タカハシ(@ntakahashi0505)です。
先日開催された「糸島市100人カイギ」第12回の様子をお届けします。
1周年記念となった今回は国際芸術祭「糸島芸農」とのコラボ開催。
個性豊かな5名の登壇者が語る、それぞれの活動と想いをうかがいました。
ということで、今回は「糸島市100人カイギ #12 レポート:大地を耕し、未来につながる根を張ろう」です。
では、行ってみましょう!
糸島市100人カイギとは
去る10月14日、糸島市100人カイギの第12回目が開催されました。

このイベントは、糸島で活躍する様々な分野の方々をゲストにお呼びし、ご自身の活動や想いを語っていただく場です。
登壇者、参加者、そして僕たち運営が交流することで、地域のジャンルを超えた緩やかなコミュニティ作りを目指しています。
毎回5人ずつ、20回開催して100人が登壇した暁には解散する、というユニークなルールで活動しています。
はじまりは、まさかのピアノ運びから
毎月1回の開催なので、今回でいよいよ1周年。そんな記念すべき回は、この10月に開催される国際芸術祭「糸島芸農」とのスペシャルコラボ企画となりました。
会場は、なんと二丈松末権九郎稲荷神社。以前、お寺で開催したことはありましたが、今回は神社ということで、そのバラエティの豊かさに驚かされます。
実はこの日、100人カイギが始まる前に、社殿に設置されていたアップライトピアノを運び出すというミッションがあったんです。
今回の登壇者でもある大澤さんや村上さんをはじめ、屈強な男性たちが6人がかりでピアノを外に運び出し、軽トラに乗せるというなかなかの重労働。僕もうっかり手伝ってしまい、イベント開始前から一汗かいてしまいました(笑)。
作業が終わって打ち合わせ、という段になっても、会場への道が少し分かりにくかったり、携帯の電波が通じなかったりと、小さなドラマが続出。
それでも無事に皆さん集合し、イベントは幕を開けました。いざ始まってみると、登壇者の皆さんのお話が本当に面白くて、今回もグイグイ引き込まれました。
それでは、お一人ずつご紹介していきたいと思います。
登壇者のみなさんの想い
村上研二さん(日々と花/野菊市主催者)
トップバッターは、「日々と花」そして「野菊市」の主催者でいらっしゃる村上研二さんです。普段はお花を育てて販売するお仕事をされています。
どんなお話をされるのかと思いきや、いきなり「相撲が好き」という話題からスタート。ご自身が若い頃から相撲をされており、そこから多くのことを学んだそうです。
スピーチはまるでアート作品のようでした。「ノースプラッシュ入浴」、つまり、しぶきを立てずにお風呂に入るという話では、「摩擦や衝突をできる限り避けたい」というご自身の哲学を語られました。
他にも、呼吸をゆっくりしながら運転する「ロングブレスドライビング」は代謝を下げてエコ、「ダイレクトイーティング」で地球の裏側とつながるなど、次々と繰り出されるインパクトのある言葉と軽快な語り口、そして物事の切り口が本当にユニークですっかり魅了されてしまいました。
そして最後のメッセージでは、僕たちが「万物界」の中の「生物界」、さらにその中の「人間界」に属する存在であるという構造に触れられました。
変化の速い人間界において、「嘘が少ないものは何だろう?」と問いかけ、その一つが「美しさや可愛さを感じる気持ち」ではないかと語ります。その想いが、今のお花の仕事に繋がっているのだと、深く納得しました。
そんな想いを誰かと分かち合いたいと始められたのが、筑前前原商店街を中心としたイベント「野菊市」です。今年で3回目となり、10月18日、25日、26日に開催されるとのこと。ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
吉川貴子さん(NPO法人いとしま児童クラブ「みんなの居場所」事務局長&スタッフ/糸島こどもの権利研究会世話人)
続いては、NPO法人いとしま児童クラブ「みんなの居場所」で事務局長を務める吉川貴子さんです。僕の息子も、「居場所」にはいつも大変お世話になっています。
吉川さんのキャリアは中学校の先生から始まりましたが、そこで感じた「もやもや」をきっかけに、海外の学校を見てみたいと、フリースクールを巡るバックパッカーの旅へ。
そこで見た子どもたち、そして大人たちの「目がキラキラしていた」光景が忘れられないと語られました。
その後も、ご自宅でのオープンハウス、教護院の保母、心の電話相談員、山暮らし、自宅出産、息子さんの不登校など、本当に様々な経験をされてきました。
その中で、さまざまなもやもやを感じられますが、それは「人も自然も、生きているそれぞれの命や権利が大切にされていないのではないか」という問いに集約されていきます。
あるとき出会ったのが、川崎市にある「夢パーク」という公設民営の施設の事例でした。「川崎市子どもの権利に関する条例」に基づいて作られた、子どもたちがありのままでいられる場所。
「これだ!」と感じた吉川さんは、糸島市でも「こどもの権利条例」の制定を請願します。そして、2024年9月に見事、制定されました。
実は僕、2023年9月のVoicyの放送で、この条例制定の動きについてお話ししたことがありました。
夢パークを立ち上げた西野さんが糸島で講演されたのを聴きに行ったレポートです。
まだ制定前だったあの動きが、吉川さんたちの力によって実現したのだと知り、個人的にものすごく胸が熱くなりました。吉川さんのような活動をされている方々の力に、僕も少しでもなれたらな、と心から思いました。

小島海さん(九州大学教育学部2年)
3人目は、九州大学教育学部の2年生、小島海さんです。
前回の100人カイギにKBCの中間雄大さんが登壇されたのですが、そのときちょうど、KBCのインターン中で、その流れで会場にもお越しいただいてました。
その後の懇親会で「次は登壇してみる?」と聞いたら「はい、します!」と即決。決断力、素晴らしいですよね。
海さんが教育学部に入った理由は、ご自身の経験にありました。
中学受験を経て入学した中学校で、不登校になった時期があったそうです。その時に通っていたフリースクールでの学びは、海さんにとって非常に大切なものでした。
しかし、それは学校教育法で定められた「一条校」ではないため、「勉強」として認められていないように感じたと言います。「学校でなくても学びはできるのではないか」、そのことについて考えたいという想いが、教育学部へと繋がりました。
そんな海さんが今、大学で夢中になっているのが、アイドルコピーダンスサークル「湊坂46」の活動です。
もともとアイドル鑑賞が好きだったそうですが、見るだけでなく「好きなものを形に残すことができる」のが本当に楽しい、と語ってくださいました。
その活動は本格的で、ダンスを覚えてステージに立つだけでなく、衣装やグッズも自分たちで制作しているとのこと。
サークルの運営、広報、そして人間関係。
大学生なんだから「もっと勉強したら?」なんて言う大人がいるのかもしれませんが、いえいえ、これはものすごく良い社会勉強になっているなと感じました。
特に印象的だったのが、「自分を含めて、関わる人全員を笑顔にしたい」という言葉です。
その精神は、まさに「他者志向的ギバー」そのもの。すでにその姿勢で活動していることに、僕はとても感心しました。
大澤寅雄さん(合同会社文化コモンズ研究所 代表・主任研究員)
後半戦のトップバッターは、合同会社文化コモンズ研究所の代表、大澤寅雄さんです。
官公庁や文化政策に関する調査研究などを手掛けられており、今回のコラボ企画である「糸島芸農」の実行委員でもいらっしゃいます。
大澤さんのテーマは、「文化を生態系として捉える」こと。
無機物から有機物を作る「生産者」(植物)、それを取り入れる「消費者」(動物や人間)、そして消費者の中には死骸などを分解する「分解者」(微生物や菌類)がいて、それぞれが役割を果たすことで循環が生まれ、生態系が成り立っています。
この循環の考え方を、文化にも当てはめることができるのではないか、というお話でした。
文化において無機物と有機物を分けるのは「心」であり、「たべる」「ねる」「したがう」といった行為は無機的な生活、「つくる」「たのしむ」「かんがえる」といった行為は有機的な生活だと分類されていました。
ここで個人的にドキッとしたのは、「はたらく」という行為が無機的な生活のカテゴリーに入っていたことです。
僕が「働くの価値を上げる」と思ってやっている活動は、この「はたらく」を有機的なもの、つまり創造的で楽しいものに変えていくことなんじゃないか、などと気づかされました。
さらに大澤さんは、「生物の多様性」と「文化の多様性」は繋がっている、と続けます。
文化が多様であれば、その地域を大切に思う気持ちが生まれ、自然や生物の多様性も守ろうという意識に繋がる。
すると地域が魅力的になり、様々な人が集まることで、さらに文化が多様になる…。
そんな素晴らしい循環が生まれるというのです。「糸島芸農」がやろうとしていることは、まさにこれなのだと深く理解しました。
糸島芸農は二丈松末地区・二丈深江地区を中心に10月18日、19日、25日、26日に開催されます。ぜひ足を運んでみてください。
コワルスキー貴幹さん(株式会社Uinta Partners代表取締役)
そして、最後の登壇者は株式会社Uinta Partners代表取締役のコワルスキー貴幹さんです。
お母様が日本人、お父様がポーランド系アメリカ人で、日本で生まれてアメリカで育ち、今は大好きな糸島に住んでいらっしゃいます。
コワルスキーさんのお話のテーマは「ライフデザイン」。2つのモデルを提示してくださいました。
一つは、多くの人がイメージする「資産最大化モデル」。年齢と共に年収は増えていくけれど、働く時間は週40〜50時間でずっと変わらない、というモデルです。
もう一つが、「自由最大化モデル」。ある程度稼げるようになった段階からは収入をそれ以上は増やさず、代わりに自由に使える時間を増やしていく、というモデルです。
コワルスキーさんは、まさにこの糸島で「自由最大化モデル」を実践されています。
では、増えた時間で何をするのか。一つは、糸島とご自身の出身地であるユタ州ソルトレイクシティとの二拠点生活。10ヶ月を糸島で、2ヶ月をアメリカで過ごす。そのために、10ヶ月で1年分の収入を得られるような働き方を目指しているそうです。
家族全員にとって、とても豊かな生き方ですよね。
そしてもう一つやりたいことが、「人生とキャリアの実験」。安全な実験を繰り返すことで、どんどん道を切り開いていきたい、と語ります。
例えば、ナレーターのようにお話が上手なご自身のスキルを活かして声の仕事をしてみたい、と周りに話していたら、本当にタレント事務所と繋がることができた、というワクワクするエピソードも披露してくださいました。
その他、糸島Appleミュージアムの設立、恋愛・結婚事業など、やりたいことがたくさんあるそうです。
何のために働くのか。何も考えずにいると、つい「資産最大化モデル」のレールに乗ってしまいがちです。でも、経済が成長し続けるとは限らない今の時代、年収が上がることが必ずしも豊かさや幸せに直結するわけではありません。
コワルスキーさんがおっしゃるように、ここ糸島には「自由最大化モデル」のような人生を送っている方が本当に多く、それがこの街の魅力なのだと僕も改めて感じます。
良い土壌を、共に耕して、根を貼っていく
5人のお話はどれも深く、レポートも長くなってしまいましたが、少しでもその熱量がお裾分けできていれば嬉しいです。
最後に、大澤さんがコメントされていた言葉を紹介します。
「コミュニティやネットワークは、植物でいうところの『根っこ』なんだ。それがきちんと育つような土壌が必要で、100人カイギのような活動がその土壌を耕してくれている」
「カルチャー(文化)」という言葉の語源は、ラテン語の「耕す」だそうです。そして「アグリカルチャー(農業)」は大地を耕すこと。「糸島芸農」の「農」は農業の農です。
僕たちのこの100人カイギという活動も、糸島という大地を耕し、そこに良い根っこ、つまり良いネットワークが育っていくことに貢献できているのかもしれない。そう思うと、少しだけ嬉しい気持ちになりました。
まとめ
以上、「糸島市100人カイギ #12 レポート:大地を耕し、未来につながる根を張ろう」についてお伝えしました。
次回、糸島市100人カイギは11/20(木)にコミュニティスペースみんなので開催です。ぜひお越しください!

引き続き、みなさんがいきいきと学び・働くためのヒントをお届けしていきます。次回をお楽しみに!
この話を耳から聴きたい方はこちらからどうぞ!