みなさん、こんにちは!
タカハシ(@ntakahashi0505)です。
先日7/1~7/4に東京ビッグサイトにて開催された「東京国際ブックフェア/国際電子出版EXPO」に出向いたところ、旭山動物園の坂東園長のトークショーを聴くことができました。
『ヒトと生き物 ひとつながりのいのち 旭山動物園からのメッセージ』というタイトルだったのですが、学ぶことが多かったので「お仕事」という視点も踏まえて紹介をしたいと思います。
実は旭山動物園についこのあいだ行ってきたんです
ご存知の方も多いですが、旭山動物園は国内でも有数の人気動物園です。
なぜ人気があるかというと「行動展示」と呼ばれる展示の仕方で、なるべく本来の動物たちの生活や行動を観察できるように創意工夫がなされていて、それが来場者に普段は味わえない感動や発見を与えているんですね。
実はつい先日6月の半ばに旭山動物園に行ってきたので、私のつたない撮影能力で撮った写真とともに一部紹介してみたいと思います。
キリンのゲンキ君は所狭しと動き回る
キリン舎はとにかく広くてゲンキ君もいつもダイナミックに動き回っています。
エサがお客さんが見る場所の近くに設置してありまして、食べている様子をものすごく近くで見ることができます。こんな感じです。
たくさんの人が観ているにも関わらず遠慮なくムシャムシャ食べまくっていました。まじカワイイです。
シロクマはドームの下から観察
シロクマコーナーですが、印つけたところわかりますか?謎のドームがあります。
実はこのドームは下から覗く用の窓的なものでして、そこから見た様子がこれ。
めっちゃ近くから見ることができます。むしろ、シロクマに狙われているアザラシみたいな気分で鑑賞することができます。
てか本当にエサ的に思われているんですかね…?
ちなみにこのドーム、2人入るのがやっとの狭いスペースなので、えらい蒸します。
宙に浮いているヤギ
普通の動物園だと地べたでウロウロしているヤギしか見ませんよね?ここのヤギは宙に浮いてます。
このように空間とエサの配置などをうまく利用して、なるべく動物たちの本来ののびのびした姿を、なるべく近くでいろいろな角度から鑑賞できるように工夫がされているんですね。
オランウータンは地上17メートルの綱渡り
オランウータンのコーナーもとても有名で人気ですが、同様に「行動展示」がなされています。
地上17メートルの高さを綱渡りをして、エサを食べに行くんですね。
この子は「リアン」という名前で、旭山動物園のオランウータン家族のお母さんです。
ちょっとわかりづらいかも知れませんが、ほら、数か月前の2月に産まれたばかりの赤ちゃん「モカ」を抱っこしています。
てか、抱っこしたまま綱渡りしてきたの!?危なくないッ!?
なぜ「危険」な行動展示をするのか?
ここからブックフェアでの坂東園長のお話を紹介していきます。
リアンは地上17メートルの綱渡りをモカを抱えながらいとも簡単にやってのけていましたが、落ちたら当然ただでは済みませんというか、ほぼ100%悲しい結末が訪れます。
通常の動物園ではだいたい地上4メートルくらいの高さの檻の中で飼育をしているそうです。そのくらいの高さであれば十分安全が確保できます。
では、なぜ旭山動物園はそんな危険な展示の仕方をしているのか?
ということなんですが、坂東園長いわく
動物が十分な能力を発揮するため
とのことです。
オランウータンは子供を産むと4~5年は排卵が止まるので、その間はべったりとハンパない愛情で子供を育てます。
その育てている期間なんですが、安全すぎる環境ですと子供を見なくなっちゃうんですって。
逆に危険があるから子供を見続けなくてはいけない、生きる力をつけさせるために教育をしなければいけない、だから一生懸命育てるのだと。
「行動展示」の目的は、ただ人間が鑑賞してより面白いというだけではないんですね。動物たちに本来の「危険」な状態を提供することで、生来からのポテンシャルを十分に引き出した成育ができるという動物たち視点でのメリットがあるんですね。
リアンの育児放棄のお話
このリアンですが、6歳のときに旭山動物園に来てモモという女の子を最初に産みました。
ただ残念ながらリアンは育児放棄をしてしまいました。
ビデオも見せてもらったのですが、リアンは泣きじゃくるモモのそばで動揺してウロウロ…。しまいにはモモの声を聞きたくないとばかりに、近くにあった麻袋をすっぽりかぶって引きこもり状態になってしまいました。
リアンは6歳という若い年齢で弟妹ができる前に旭山動物園に来たので、十分に母親の子育てを見ずに育ってしまい、子育てというものをその目で見て学ぶ機会に恵まれなかった、というのが育児放棄に至った理由と分析していらっしゃいました。
リアンのように十分に母親との時間を過ごさずに若い年代で動物園を引っ越すオランウータンが多いのですが、その理由は
- 新たな環境になじみやすい(飼育しやすい)
- 育ってからだとペアにしづらい
- 小さい方が可愛らしい(受けがいい)
など、人間の都合だそうです。
この後、介添保育によりリアンは無事に母親としての自覚を持つことができたのですが、人間の都合で危うくオランウータンとしての命の繋がりが絶たれてしまうところでした。
リアンはこの後、モリトというお兄ちゃんと、今年生まれたばかりのこのモカを産むことができますが、綱渡りにモカを連れて行く意味がここでようやくハッキリとわかりました。
会社を「動物園にしない」
坂東園長は「人も同じ」とおっしゃっていました。安心安全な環境にいると、転んだときの手の付き方すらわからなくなる…と。
なんかですね、ガツンときました。
そして元LINE社長で現C Channel社長の著書「シンプルに考える」のとある一節を思い出しました。
会社を「動物園にしない」
このまま会社に残れば、エスカレーターのように自動的に上がっていける。そう考えた人たちは、かつてユーザーに認められようと目をギラギラさせながら働いていた野性的な姿が失われ、牙を抜かれたようになってしまった。まさに「動物園状態」が生まれつつあったのです。
やっぱり、人間は弱い…。
そう思わずにはいられませんでした。人は一度幸せになると、それ以上を求めなくなる。
私自身も先代たちが築いてくださった豊かさという安心安全な檻で育ってきたのは間違いないと思いますし、今も守られています。
私の場合は、旭山動物園の皆さんがオランウータンたちにしてあげているように、他の誰かが生来からのポテンシャルを十分に引き出せる環境を用意して下さっているわけではありません。
ことあるごとに、自分自身がきちんと生き生きと生来のポテンシャルを伸ばすことができる環境にいるのか、また他の人に対してはそういう環境を提供できているのかを省みたいと思いました。
まとめ
旭山動物園…こんなことまで学べるなんて、本当に素晴らしいですね。動物から学ぶということは本当はこういうことなんだと思います。
ちなみに大人820円です。まだの方はぜひ訪れてみてください。この記事で十分に伝わったか心配ですが、いちいちテンションがあがります。
森川氏の著書ですが今回紹介した一節以外にも珠玉の考え方が詰まっています。もうここしばらくはすっかりバイブル的な存在になっています。
まだの方はぜひご一読を。