DeNAの記者会見で「キュレーションサイトはやらない」と言って欲しかった理由

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photo credit: swanksalot Ok, Don’t Stop via photopin (license)

みなさん、こんにちは!
タカハシ(@ntakahashi0505)です。

先日3/13にDeNAのキュレーションサイトをめぐる一連の問題について、記者会見が開かれました。

「キュレーションサイトを再開するかどうか」、私はその点に非常に興味がありましたが、その点DeNA創業者の南場氏がこう語りました。

キュレーションを続けるかどうかは目処が立っていない。白紙。

DeNA南場会長「メディアは経験のない我々が形だけ整えてできるものではない」
「収益の柱など、あり得ない」

個人的には、非常に残念で、ガッカリしました。

「キュレーションサイトはやらない」

こう断言して欲しかったという気持ちがあったからです。

著作権侵害や薬事法違反などの法令違反は決して許されることではありません。それはもちろんあります。

しかし、それ以前に、価値がない(というかむしろ搾取する)方向に多大な労働力とコストをかけてビジネスをしていることに対するセンスのなさを潔く認めて欲しかったのです。

つまり、キュレーションビジネスはどうひねっても、日本のIT・インターネット市場、そして「働く」ということから価値を奪うものであり、それをプラスに転じさせられることができるとはどうしても思えないのです。

今日は、その点を考えとしてまとめておきたいと思います。

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キュレーションビジネスの仕組みと目的

DeNAをはじめとする各社の「キュレーションビジネス」の仕組みはこうです。

  • Google検索による上位表示を最優先目的とした記事コンテンツを大量に投下する
  • クラウドソーシングやインターンなどの安い労働力を使う
  • 他のサイトをリライトすることで記事作成の工数を抑える
  • 著作権侵害などの法的リスクは「プロバイダ責任制限法」で回避

正確性が欠け法的に危うい医療情報が提供されることや、著作権の侵害などの複数の問題が明らかになり、Web上で大炎上。DeNAに関しては全てのサイトを閉鎖して今に至っています。

なぜ、このようなビジネスが生み出されてしまったか?

それについては、第三者委員会報告書では

守安氏は、目標とする時価総額から逆算してDAUを計算し、9サイトにおいて達成すべきDAUをA氏に伝えていた。

と指摘されています。

DeNA報告書が示すSEO最優先の実態 守安社長が定めた目標が優先された
DeNAはどのような方針でキュレーションメディアを運営してきたのか。調査報告書は、WELQやMERYの実態を明らかにしている。

ロジックとしては

  1. 時価総額をこれだけ上げるためには、DAUがこれだけ必要
  2. DAUをこれだけ上げるためには、これだけの検索流入が必要
  3. 検索流入をこれだけ上げるためには、これだけの記事生産量が必要
  4. これだけの記事生産をするためには、前述のような生産体制が必要

という形になるかと。

わかりやすいと言えばわかりやすい。

搾取するだけの継続性のないビジネス

しかし、お気づきの通り、欠陥があります。

本来、誰かに何かの価値提供をすることで、その見返りとして対価を受け取るといのがビジネスの基本のはずです。

前述のキュレーションビジネスのモデルでいうと、その「価値提供」はどこにあるのか?ということが気になります。

直接的な関係者については、短期間で以下のようなメリット・デメリットを被ることになっていたはずです。

  • DeNAは目的の時価総額を目指すことができ、広告による収益を得る。
  • 広告主はもしかしたら、これら新サイトに広告が打てるようになって嬉しいかも。
  • 広告代理店は売る商品が増えて嬉しいかも。
  • クラウドソーシングは儲かる。
  • キュレーションライターも簡単に収入を得られるのでおいしい。
  • ユーザーは欲しい情報が得られればいいので、キュレーションだろうが何だろうが別に関係ない。ただ、信頼性が低い情報をつかまされるのはいただけない。
  • パクられた一次情報提供者は本来得られるトラフィックや収益を搾取される。

しかし、長期的かつ間接的な影響まで見てみると、一次情報提供者が本来得られるものが得られなくなり、一次情報提供の労力に対する価値(つまり生産性)を下げ、その活動の持続性を下げる結果になります。

当然ながら、一次情報提供者とそれによるコンテンツ供給量が減少し

  • Google検索結果の魅力が低下するので、Googleは困る
  • 検索結果の選択肢が減るので、ユーザーの検索体験価値が減少する

ということに成り得ます。

全体として、市場価値を低下に導き、一次情報提供者の労働力を搾取するだけの、継続性がないビジネスになっちゃうのは、すぐに気付く話だと思います。

単価の安い労働力を使った大量生産

また、クラウドソーシングやインターンなど単価の安い労働力を大量に使って、記事をパクらせるという、彼らにとってスキルにも実績にもならない作業をさせるという点もどうかと思います。

以下「MERY」記事量産の現場についての証言記事からです。

90分に記事1本書くことがノルマ。達成できないと社員の指導対象になる
インターンといえば聞こえはいいけど、要するにバイト。時給は1千円くらいだった

「MERY」記事量産の現場 「90分に1本のノルマ」インターンが証言
女性向け人気サイト「MERY(メリー)」の全記事が、7日から非公開になりました。いったいどんな人が記事を書いていたのでしょうか。DeNAの下でサイトを運営していた「peroli(ペロリ)」のインターン生として記事を書いていたという女子大生

マニュアル化できる単純なリライト作業に落とし込んで、大量の人員をかけて大量に生産をする。

これって、IT企業がトライすべきビジネスモデルなのでしょうか…?

結果として、彼女たちの努力は文字通り無に帰すことになりましたが…。

もうキュレーションをやらないと言って欲しかった理由

昨年から政府が「働き方改革」を大々的に推進して来ましたが、先日残業上限が「月100時間未満」で決着というニュースがありましたね。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170313-00000093-jij-pol

過労死ラインと言われる80時間以上を許容する非常に疑問な内容で実にガッカリですが、進まないよりはマシかと思います。

これからも議論を進めるべきですし、少なくとも「働き方改革」という言葉が浸透してきているのには一定の意義を感じます。

さて、この「働き方改革」の動きですが、進めるべき明確な理由があります。

まず、少子高齢化により日本の労働人口の大幅減少は止められないという点が大前提としてあります。

一方で、日本の生産性は世界各国に比べて低いという事実があるので、生産性を上げるという唯一ともいえる突破口が開かれています。

ところが、今でも多くの企業は、従業員、若者、下請け企業、フリーランス、個人などから「搾取」をするというアイデアと手法を手放せないでいるのではないでしょうか?

なぜ日本は停滞してしまったのか、そして第4次産業革命と働き方改革は復活のチャンスとなるか
第4次産業革命が本格化してきました。今回の記事では、第4次産業革命とは何か、また戦後日本の高度成長の仕組みについてひも解きつつ、どのように第4次産業革命と働き方改革のチャンスをつかめば良いかを考察しています。

しかも、その搾取する相手の多くは、人口が激減しつつある日本人です。

搾取から生産に転換をしないと、本当に日本は立ち行かなくなるのではないかという不安があります。

ですから、日本を代表するIT企業の反省の弁なのであれば、他人の成果を搾取しするようなビジネスなんて「もうやりません」と言って欲しかったのです。

まとめ:Googleが掲げる10の事実をパクろう

「いやしかし、どうしても生き残るには仕方がないんだ」という経営者やビジネスリーダーがいるのであれば、この言葉をお送りします。

悪事というのは、法に触れることだけを指しているのではなく、他人や市場に不利益をもたらすことを「悪事」と言っているはずです。

その上でGoogleは、インターネット検索エンジンや詳細で多機能な地図、100以上の言語の翻訳、誰でも投稿閲覧が可能な動画プラットフォームなどを無料で提供し、世界中の人々の生産性に貢献しています。

Googleほど大きなことは実現できないにしても、小さいレベルであれば、搾取をせずに生産するビジネスはできますでしょ。

そんな風に思います。

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