みなさん、こんにちは!
タカハシ(@ntakahashi0505)です。
先日MFクラウドExpo2016に参加してきました。
MFクラウドExpo2016とは、クラウド会計ソフトのリーディングカンパニーである株式会社マネーフォワードさんが主催する、国内のクラウドサービスやFintechサービスを提供する各社が集結するビッグイベントで、朝から晩まで熱いセッションが繰り広げられます。
いやー、超疲れますが、ほんとに行って良かったです。いつもそう思います。
さて、MFクラウドと言えば、皆さまご存知の日本の代表的なクラウド会計ソフトの一つです。
もう言うまでもありませんが、MFクラウドを使うことで経理作業や確定申告、経費精算などが超劇的に簡単になります。
今回、朝10時から夜19時まで、ランチ食べながらもセッションもあり、毎回15分しかない休憩時間に展示も見て回り、PCの充電補給もしつつ、てな感じでまったく休む暇のない密度の濃い一日でした。
その中から、いくつかレポートをしたいと思うのですが、今回は中小企業のクラウド利用率についてです。
本イベントでもそれに関連して色々と調べてみても、本当にガッカリすることばかりなのですが…
現実を直視すべしということで、元気よく行ってみます!
日本は超クラウド後進国?
MFクラウドExpo2016、冒頭は株式会社マネーフォワード代表取締役CEOの辻庸介氏のお話。
「クラウド経営とフィンテックがもたらす世界」というタイトルでさらさらとFintechを取り巻く国内外の様々なプレーヤーとその動き、法整備との関係性、MFクラウドとしての動きなどお話下さいました。
昨年も参加しましたが、国内外のFintechを取り巻く状況は劇的に変化しているな…と。
しかしながら、私がどうしても気になったのはこちらのスライドでした。
日米の中小企業のクラウドサービス利用率の比較です。
ちょっと斜めになっていて恐縮なのですが、クラウドサービスの利用率は
日本の中小企業:23%
米国の中小企業:59%
圧倒的な差がついています。
まじ、焦りました。
未だに進まない中小起業のクラウドサービス利用
出展が平成25年の情報通信白書ということで3年前のデータだからだろ、と思いまして平成27年のデータを見てみました。
一部でもクラウドサービスを利用していると回答した企業の割合は38.7%
おお!増えてますね~…と思いきや、資本金規模別(下図右側) で見てみますと
資本金規模が1,000万円未満の企業のクラウドサービス利用率は29.5%です。
資本金規模が小さい=中小企業ではありませんが、規模の小さい企業ほどクラウドサービスを利用していない傾向は依然見て取れます。
中国企業のクラウド利用率は
アメリカがすごすぎるのかも知れませんね。
では、他の国とも比べてみましょう。
中国に関するクラウド利用に関するレポートです。
IDCが出した中国企業のクラウドに関するレポート によると、2015年時点で68%(同じレポートで日本は22%)の企業がクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaSのいずれか)を利用している。
…ダメでした。
二つの大国としか比べていませんが、日本だけが遅れていると思っていたほうがよさそうな気がします。
なぜ日本企業はクラウドを利用しないのか?
クラウドを利用しないという選択が、どう考えても私には理解できないのです…。
特に、クラウドサービスはまさに中小企業のためにあると思うんです。
例えば
- チャットワーク:無料から利用可能、ビジネスプランは月500円/1アカウント
- MFクラウド会計:フルで利用できるベーシックプランでも月2,980円
- Googleの各種サービス/Google Apps for Works:無料から利用可能、ビジネスプランは月500円/1アカウント
- Evernote:無料から利用可能、最もオススメのプレミアムプランでも月450円
- Dropbox:月1,200円で1TB(!)
などなど、無料から使えるサービスも多数ありますし、有料でも大概はアカウント単位の従量制なので初期コストが劇的に安いんです。
激安なんです。
その一つすら利用したことがない企業がまだ70%以上もいる…理由が知りたい!
なぜ日本企業はクラウドサービスを利用しないのか
それで、また総務省のデータを見てみます。
クラウドサービスを利用しない理由です。
44.7%が「必要がない」、34.5%がセキュリティ面の不安を挙げている
…まじですか…。本当に必要ないんですか?!
にわかには信じがたい。
少しヒントになるデータで、今度は平成25年の総務省のデータなのですがクラウドサービスの利用内訳つまりクラウドサービスを何に使っているか?です。
この図では「情報系システム」と「基幹系システム」と大きく分けていますが、コミュニケーションなど全社的にかかわる部分のほうが、開発・人事・経理・生産管理などの部門別にかかわる内訳よりも米国との差が小さい印象です。
端的に言うと、私は現場に近いところほどクラウドサービスの利用率が低いのではないかと推測しています。
クラウドサービスが浸透しない組織的構造による要因
さらにこれを読み解いていくヒントとして、先ほどのZDNet Japanの記事の中にこのような記述がありました。
日本では、経営層がITに関して米国と比較すると新規ソリューション知識が乏しく、また自社競争力向上ではなく、業務の効率化やコスト削減などの社内目的として活用するという認識が強い。
これを打開するためにはボトムアップ的に改革を進めて行く必要があるが、現場の人間としては、クラウドサービスなど新しい技術を導入することで、さらなる業務の効率化やコスト削減が可能であるとは考える一方でリスクが大きくなることも知っている。
この記事はこの前後もかなり興味深い内容なのでぜひ読んで頂きたいです。
さて整理しますと、日本の経営者の状況としては
- ITが解決するものは業務効率化、コスト削減であると思っている
- 業務効率化、コスト削減は経営として優先度が高いものではないと思っている
- 業務効率化、コスト削減はボトムアップで提案がなされるものと思っている
- しかしボトムアップで提案がなされても判断できる材料を持ち合わせない
といったところでしょうか。
そして現場としては
- 業務効率化、コスト削減は達成しても評価されづらい
- システムを変更することで生じ得るリスクを背負いきれない
ということで、積極的に提案をしづらい事情があるものと予想されます。
ちなみに、ITに期待する役割がそもそも日米で違っていまして、先ほどのZDNext Japanの記事では
ITに対する期待では、日本企業が「ITによる業務効率化/コスト削減」をトップに挙げているのに対し、米国は「製品やサービス開発強化」がトップ、これに「ビジネスモデル変革」が続いていた。
ともありました。
トップの役目は変えること、現場の役目ではない
ここでMFクラウドExpo2016に戻ります。
午前中の基調講演「自ら時代を創る「意思」を持つ~10年後に差がつく経営術~」では
- 株式会社クラウドワークス代表取締役社長兼CEO:吉田浩一郎氏
- 株式会社ブイキューブ代表取締役社長CEO:間下直晃氏
- 株式会社メタップス代表取締役CEO:佐藤航陽氏
という錚々たるメンバーによるパネルディスカッションが行われました。
- 企業が成長した理由とその痛み
- いかに意思決定をするか
- 連続性と非連続性
- 海外マーケットの攻め方
- 海外拠点のマネジメント
- 情報の仕入
などなど、一流の上場企業のトップから珠玉の経営の考え方や捉え方の雨あられ…。
さて、クラウドサービスの利用率の重い悩みに関しては、ブイキューブの間下さんが最後にお話された内容がぐっと刺さりました。
- トップの役目は変えていくこと
- それを拒む会社は続いていかないと思う
- 働き方を変えて、いい意味で楽をしていく
- トップのコミットメントが必要
- 現場に丸投げで放り込んでもダメ、現場は変えたくないと思っているから
これはきっと間下さんが、1998年に創業されてから20年近く、数々の企業の経営者にずっと言い続けてきたことなんだろうと思います。
まとめ
そういえば、去年の「cybozu.com カンファレンス 2015」でもそのテーマは「変える覚悟、変わる覚悟。」でした。
クラウドサービスを世に提供されている方々は皆さんは、そういうメッセージを世の経営者にずっと送り続けているんですね。
日本の仕事とITを取り囲む状況はあまり良くないかも知れません。
とはいえ、そこにずっと活力とメッセージを送り続けている、超優秀な方々がたくさんいると思うと、勇気が湧いてくるものです。
超ちっぽけな力しかありませんが、私もその一員として少しでもお役に立てればと思います。