みなさん、こんにちは!
タカハシ(@ntakahashi0505)です。
来る2021/08/02に、拙著「Pythonプログラミング完全入門 ~ノンプログラマーのための実務効率化テキスト」(通称「#ノンプロPython」本)が発売となります。
今回、出版をお願いしております技術評論社さまのご厚意により、当ブログに「本書の第1章を全文掲載しても良い」と許諾をいただきました。
ということで、本シリーズでノンプロPython本の第1章「Pythonを学びはじめる心構えを整えよう」をお送りしております。
前回の記事はこちら。
今回はそのつづき、「ノンプログラマーがプログラミングを最強の武器とする方法(後編)」です。
では、行ってみましょう!
ノンプログラマーがプログラミングを身につける価値
本職のプログラマーの多くは、コンピューターサイエンスについての高度な教育を受け、職場でも常に先端技術に触れる毎日を送っているわけですから、下手にノンプログラマーがちゃちゃを入れる必要はない、むしろ役に立てず、足手まといになるのでは…という心配もあるかも知れません。
確かに、本職のプログラマーのほうがはるかに高い技術力を持っていて、良いシステムを素早く作ることができるのは確かです。しかし、ノンプログラマーがプログラミングを身につける価値については、技術力とは別のところにも注目するべきです。
前回紹介した「陣屋コネクト」の例を思い出してください。旅館業についてまったく知らないIT企業が、このクラウド型パッケージ商品の発案をすることができたでしょうか? 旅館業を本業・本職としている人材の深い知見や経験があってはじめて、そのひらめきが生み出され、そのニーズに寄り添ったシステムを完成させることができたのです。高い技術力があったとしても、「知らない」ことについては、そのアイデアを生み出すことはできませんし、その当事者が感じている真のニーズを感じることができないのです。
一方で、ノンプログラマーの場合、プログラミング技術はそこそこだとしても、それぞれが本職の分野のプロフェッショナルです。その知見や経験があるポジションからでしか見えない課題やチャンスがきっとあります。プログラミングを学ぶことを通して、この課題はITで実現できるのではないかという発想につながり、その発想がITの得意とする分野なのか、またその実現性についても考えることができます。
高い技術が必要になる場合は、本職のプログラマーの力を借りる局面が出てきます。開発会社を探し出し、実現したいことを伝え、提案された要件や見積を評価するという手順が必要です。ノンプログラマーは、その際の交渉役、通訳として活躍します。
プログラミングの世界は専門用語のオンパレードです。一方で、プログラマーはこちらの業界や事業については、無知であることがほとんどです。お互いの領域についての知識がゼロだとすると、どうしてもそのコミュニケーションに労力がかかります。しかし、事業側にプログラミングの知識や経験をある程度でも持ち合わせている人材がいれば、より本職のプログラマーと円滑にコミュニケーションをとることができるようになります。
さまざまな業種の専門家たちが、それに加えてプログラミングのスキルを掛け算することで、その専門家でないと発想できない新しいアイデアが次々と発案され、実現されていく。国内市場が縮小していくというピンチの中でも、そのようにして新しい産業を生み出すチャンスがあり、挑戦できるというのであれば、ワクワクすることではありませんか。
実務で役立つツールを作ることで学ぶ
それで、実際にプログラミングを学び、キャリアのテコ入れをしていくわけですが、闇雲に行動をはじめてはいけません。「時間」とそのコントロールの重要性の認識が甘いまま進み始めると挫折する可能性がとても高いのです。
日本の労働環境では、時間に対して報酬が発生する、つまり時間とお金が1対1であるという考え方が根強く浸透しています。ですから、従業員として働くという行為は、時間をお金に直接的に変換する行為と認識している人も多くいます。残業をすればその時間数に応じて報酬が増えますし、有給ではない休暇をとればその日数に応じて報酬が減ります。
しかし、これからプログラミングを学び、武器としていくのであれば、時間とお金が1対1であるという考え方は捨てなくてはいけません。直接変換できる金額よりも、時間のほうが圧倒的に貴重です。生活費は稼ぐ必要がありますので、その分は最低限確保する必要がありますが、たかだか20%アップする残業代のために余計に時間を失ってはいけません。
時間をお金へと変換せずに、何に変換するか。それは「スキル」と「さらなる時間」です。
まず、最初のステップはプログラミングスキルを身につけます。序盤の基礎学習の段階では、そのスキルは実務にまったく役に立ちません。しかし、ある程度学習を重ねると、何らかのツールを作れるようになります。そこで、すかさず自らの日々の業務の自動化や効率化を実現するツールの開発を目指してください。さあ、そのツールを活用しましょう。これまで業務にかかっていた時間を短縮して、新たな「時間」を生み出すことができたはずです。
その新たに生まれた時間を活用して、さらに学習を重ね、他の業務も自動化、効率化をしていくことで、さらに時間を生み出します。そして、チームの業務も自動化、効率化をしていきます。周囲の信頼や承認を得ることで、業務時間内でプログラミングに携わり、学べる機会が増えていきます。
ここまでのステップをまとめると以下のとおりです。
- 時間を確保する
- プログラミングの基礎を学ぶ
- プログラミングの基礎をもとに、実務で役立つツールを作る
- ツールを活用して生み出された時間で、さらに学習する
プログラミング学習では、なるべく早い段階で3と4の繰り返しのサイクルに入ることがとても重要です。そのためにまず目指すべきツールは、実務で役立つツールであるべきです。実務と直接関係ない「Webサイト」や「スマホアプリ」の開発を目指してしまうと、スキルを磨いても新たな時間を生み出せないため学習時間の確保が難しくなりますので注意が必要です。
本書の目次をご覧いただくと、多くのノンプログラマーが実務に活用できるツールの作例をたくさん用意しています。これらのツールを作って学ぶことで、プログラミングのスキルを学ぶことと、新たな時間を生み出すことを手助けします。
しかし、実際の現場ではカスタマイズしないと、うまく活用できないこともあるでしょう。また一部の処理を流用して、新たなツールを作り出したいということもあるはずです。そのためには、作例コードの一行一行の意味を正しく理解し、思い通りの動作をするように正しいコードに作り変えたり、再利用をしたりする必要があります。
そこで、本書の前半のプログラミング基礎の学習が役立ちます。基礎をしっかり固めておくことで、正しい応用ができるようになります。
そのようにして作例を作ることや、そのカスタマイズを通して、プログラミングスキルを身につけつつ、時間を生み出してください。すべての作例について、作りきった段階であれば、各ドキュメントや書籍、Webの情報を組み合わせて、新たなツール開発にチャレンジする力を身につけていることでしょう。
掛け算で市場価値を高める
その流れの中で、視点としてぜひ持っておいていただきたいのが、自らの専門分野や得意分野とプログラミングスキルの掛け合わせでポジションを見つけることです。
専門分野の世界では、あなたは平均的な知識と経験を持つ、平均的なポジションにいるかも知れません。同じような人材が市場にたくさんいて、需要に対して供給が十分にあるのであれば、その知識と経験を持つ人材の市場価値は高くなりません。
しかし、「この分野の専門知識と経験を持ちながらPythonを活用できる人材」でくくったらどうでしょうか?この掛け算をするだけで、かなり絞られるはずです。お伝えしてきた通り、どの業界でもITが強みであることは有利に働きます。専門分野とITスキルの掛け算に市場ニーズがあり、その人材が限られているのであれば、その市場価値は高くなります。
そして、その掛け算の領域でのポジションを確固たるものとするため、社内だけではなく、SNSやブログなどでアピールをしていきましょう。旗を立てて発信を続けることで、自らの価値をアピールしつつ、強固なものにしていくことができます。
このように、専門分野や得意分野とプログラミングの掛け算をした領域でポジションをとっていきましょう。これで、あなたの市場価値を高めることができます。
ぜひ、今このタイミングから、本書で学ぶこと、プログラミングについて、あなたの専門分野、得意分野について発信をはじめてみましょう。
(つづく)
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