みなさん、こんにちは! タカハシ(@ntakahashi0505)です。
学習コミュニティは、学習の加速、多様な学び、モチベーションの向上など、参加者個人に大きなメリットがあるものです。
前回はその点、多様な学びを得られるということについてお伝えしました。
一方、企業に学習コミュニティ、つまり社内コミュニティがある場合、企業にもめちゃくちゃ多大な、そしてたくさんのメリットがあります。
今日は、社内コミュニティの価値について、ぜひともお伝えしたい…!
ということで、今回は「経営者&人事担当者必見!社内コミュニティの価値と企業にもたらすメリット」についてお伝えします。
では、行ってみましょう!
社員がスキルを身につけると転職してしまう?
「社員がスキルを身につけると転職してしまうのではないか」
中小企業の経営者の中には、このような懸念から、社内でのリスキリングの取り組みや、従業員がスキルを身につけることに消極的な方がいます。
実際、人材の確保も困難と感じているでしょうし、これまでやってきた仲間がそっぽを向いてしまうのがいや…そういう気持ちもわからなくはありません。
しかし、だからといって、従業員の可能性の芽をつぶしていいというわけではないはずです。
この点、いずれも解決してしまう、ひとつのアイデアがあります。それが、「社内コミュニティ」です。
情報と知識の違いを理解する
ちょっと話が飛ぶように見えるかもですが、まず前提として情報と知識の違いについて論じていきたいと思います。
みなさんは、情報と知識の違い、説明できますでしょうか?
現代では、Webや書籍を通じて学ぶことが非常に手軽にできるようになり、さらに生成AIがそこに加わることによって、さらにそれは加速しています。
ほとんどのものは無料で、書籍だとしても安価で手に入ります。
しかし、このようなケースを考えてみましょう。
あなたの友達が、「外科医になりたい」とWebや書籍を使って、ものすごく勉強をはじめました。それはもう、徹底的に毎日デスクに向かってWebや書籍でひたすら学びました。
さて、あなたがうっかり怪我をしたときに、その友達が「手術するよ」と進言してくれたときに、「ではお願いします」となるでしょうか?
気持ちはわかるけど、お願いするには何かが足りないと感覚に思うのではないでしょうか。
Webや書籍で得たものは「情報」です。
その情報に加えて、実際に実践し、活用し、そのような経験を通して、ようやくその技能は使えるようになります。そうして出来上がっていくものが「知識」です。
つまり、知識というものは情報だけにあらず、プラス経験の蓄積であり、生きている限りダイナミックに生き続けていくものです。
実際に、お医者さんは自らの実践の成功・失敗や、外部からの新たな情報やテクノロジーの提供により、自らの考えややり方を次々とアップデートしていきます。
知識は情報と経験の蓄積であり、人に紐づいた状態で、絶えず進化していくものといえます。
暗黙知と形式知
こうして人に紐づいた知識ですが、言語化できるものと、そうでないものがあります。
科学者のマイケル・ポランニーはその点について、こう述べています。
我々は語れる以上のことを知っている。逆に捉えると、知っているけど語れない部分がある
そして、この語れない部分を「暗黙知」と名づけました。一方で、語れるぶ分を「形式知」といいます。
実践共同体の研究者エティエンヌ・ウェンガーは著書『コミュニティ・オブ・プラクティス』の中で、このように言及しています。
実践共同体は知識の生きたレポジトリーの役割を果たす。そして、その知識は暗黙知と形式知を結び合わせたもの。
人と人との関わりの中で、形式知だけでなく暗黙知も含めて知識を共有・保管・創造できる。
「クラス」という知識の共有
これを説明するコミュニティ「ノンプロ研」のエピソードがありますので紹介します。
プログラミングの世界で、かなり初学者を悩ませる難しい概念として「クラス」というものがあります。
Webや書籍では、その解説を見つけることができますが、多くの場合、それらを読んだだけで「わかった」とはなかなかなりません。
そこで、ノンプロ研の定例会というイベントで、クラスを取り上げたときがありました。
イベント中は、多くの参加者は頭から煙が出ているような状態で理解に苦しんでいましたが、そのあとの懇親会であーでもないこーでもないと語り合ったり、その後、それぞれがコードを写経(書き写して実行すること)して、その結果や気付きについてSlackで議論したり、そうした活動を通して、コミュニティ内の多くのメンバーが一気にクラスを理解してしまいました。そう、一気にです。
今では、各プログラミングの中級講座でクラスは当たり前に教えられる内容となっています。
形式知のインプットだけでは足りない。言葉にはできないけれども、ともに活動することによって暗黙知も共有され、それによって「わかった」という状態になる。それをまさに体験したということです。
社内コミュニティが企業に与える価値
この話を、社内コミュニティに転用していきましょう。
実践共同体として機能する社内コミュニティは、知識の保管が可能です。形式知だけでなく、暗黙知も含めて保管されています。ですから、ある社員が辞めても、知識は社内コミュニティに蓄積されていますから、その知識は社内に残り続けます。
加えて、社内で良質なコミュニティ活動が行われている場合、社員にとってもそれは成長の機会であり、充実感をもたらすものとなりますから、社員が会社に在籍し続ける動機にもなり得るのです。
さらに、社内コミュニティの知識、とくにそれに含まれる暗黙知は、企業の活動としても強みになり得ます。
形式知は、書類やデジタルデータとして保存しやすく、容易に共有・拡散できます。これらは、今やWeb、書籍、AIによりすぐに入手でき、即座に模倣されるものです。
一方で暗黙知は、それこそ「語れません」。ともに活動することでのみ共有することができます。ですから、他社に気づかれず、気づかれたとしても容易に模倣することが難しく、自社にしか持ち得ない独自性のある知識として価値を持つようになります。
人材の価値というのは、ひとつ、こういったところにあるのではないでしょうか。
まとめ
以上、「経営者&人事担当者必見!社内コミュニティの価値と企業にもたらすメリット」についてお伝えしました。
このように、社内コミュニティで共に学び、実践を繰り返すことで、形式知だけでなく暗黙知も共有され、企業の強みとなる知識が蓄積されていきます。経営者のみなさん、人事担当者のみなさんには、このことをぜひ知ってほしいです。
引き続き、みなさんがいきいきと学び・働くためのヒントをお届けしていきます。
次回は、学習コミュニティの活動の継続について考えます。
お楽しみに!
この話を耳から聴きたい方はこちらからどうぞ!
連載目次:学習コミュニティをつくろう!
リスキリングやDXを推進するのにめちゃくちゃオススメなのが「学習コミュニティ」をつくること。このシリーズでは、ノンプロ研の圧倒的事例と「実践共同体」の理論をベースに、熱量高く、楽しく持続する学習コミュニティのつくりかたを紹介します。- 職場では学び合わない日本人…でもコミュニティならメチャクチャアクティブ
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